サードオニキス(またはサードニックス)は、縞目をもつアゲート(瑪瑙)の一種で、赤白の縞模様をもつものをいいます。
和名は、紅縞瑪瑙です。

サードオニキスのプロフィール
サードオニキスの語源
サードオニキスは、サードとオニキスの二つの言葉で成り立っています。
サード
そのサードは、小アジアのリディア王国の首都サルディスがその語源とされます。(マルボドゥス著『宝石について』)
あるいは、ペルシャ語の「sered」(黄色がかった赤)に由来すると言う説もあります。
「サード」という宝石の名前としてあり、赤色、赤色がかったオレンジ色、赤色がかった褐色の玉髄のことをいいます。
オニクス
オニクスは、白や黒が交互にあらわれる縞模様のある瑪瑙の一種。
オニクスはギリシャ語でonyksで人の爪のことを言います。その石の由来は、オニクスの色が輝く爪の色のように見えたから。
古代ローマでは神聖な石だった
古代ローマでは、赤と白の組み合わせは、「血のたぎりと生命の発展」を想像させるもので神聖な宝石として好まれていました。
当時はインドやアラビアなどから輸入され、印章やカメオ(浮き彫りを施した装飾品)として、カーネリアンの宝石同様に絶大な人気をもっていました。
サードオニクスは瑪瑙(アゲート)の一種
サードオニクスは、和名を紅縞瑪瑙といい、石英(クオーツ)の中でも半透明で縞目をもつアゲート(瑪瑙)の一種です。
アゲートは、塊状結晶鉱物(潜晶質石英)のひとつです。
《石英(SiO₂)の構造による分類》
結晶質鉱物・・・ロッククリスタル(水晶)・アメシスト(紫水晶)・シトリン(黄水晶)など
塊状結晶鉱物(肉眼で結晶が見えない)・・・カルセドニー(玉髄)・碧玉(ジャスパー)・瑪瑙(アゲート)
非結晶鉱物・・・オパールなど
アゲートの種類
- サードニックス(紅縞瑪瑙)・・・赤と白の縞模様
- イエロー・アゲート(黄瑪瑙)・・・黄色
- グリーン・アゲート(緑瑪瑙)・・・緑色
- モス・アゲート(苔瑪瑙)・・・縞目ではなく、苔状や草木状の模様
- ブラック・オニクス(黒瑪瑙)・・・縞目に関係なく黒色
モス・アゲートは縞目でなく、例外の模様ですが、模様も縞目のないブラック・オニクスは、アゲート(瑪瑙)の定義をはずれていて頭を混乱させます。
サードオニクスの意味 【石言葉】
サードオニクスの石言葉は、
①夫婦の幸福 ②結婚運
です。
ちなみに、瑪瑙の宝石言葉は、「親子の絆」です。これは、カーネリアンもサードニクスも、古くは印章に使用され、代々親から子に引き継がれたことが一つの要因と考えられています。
①夫婦の幸福
サードオニクスが8月の誕生石になっているのは、夫婦の絆が試されるのはサマータイムだからです。
昔から「夫婦の愛を守る石」として尊ばれてきました。
赤と白の縞模様は、情熱と純愛の調和を象徴し、互いを思いやる心を育むといわれます。末永く平和な結婚生活をもたらす守護石とされています。
②結婚運
サードオニクスは、良縁を導き、誠実な愛を見極める力を授けると伝えられています。
恋愛において真実の絆を育み、誠実な伴侶を引き寄せる象徴として身につけられてきました。
この石は、結婚運を運ぶ、幸福な縁を結ぶ護符となると信じられています。
サードオニクスの伝説
暴君ポリュクラテス王のサードオニクス
プリ二ウスの『博物誌』に「僭主(暴君)ポリュクラテスの宝石」という有名な話があります。もともとのお話は、紀元前5世紀のヘロドトスの『歴史』に載っていたものです。
ヘロドトスの文章では、スマラグドス(現代のエメラルドとされている)しかし、プリニウスの本では、サードオニクスとなっています。
このように登場する宝石に違いがあります。古代ギリシャで価値があった宝石と古代ローマの1世紀頃の宝石に違いがあったためと思われます。
イオニア海に浮かぶ島々やその海岸を統治するサモス島のポリュクラテス王は、エジプトのファラオであるアマシス2世と同盟を交わします。
その頃、ポリュクラテス王は、神のご加護を受けて自分でも不思議なぐらい幸運が続きました。幸せの絶頂ともいうべき状態です。
ポリュクラテス(左)とアマシス2世
とアマシス2世.jpg)
同盟関係のエジプトのアマシス王は、使者を出し、警告します。
「人間が生涯を通じて幸福であり続けることはできない。
神々は、あまりに幸福な者を最後には打ち倒すものだ。
だからこそ、おまえが持つ最も貴い宝を自ら手放し、運命と分かち合うがよい。」
その言葉を聞いてポリュクラテス王は、小舟で沖へ出て行ってサードニックスの指輪を海に投げ込みました。
ポリュクラテス王は、深く悲しみます。最も大切なサードニックスの指輪を手放したからです。
ところが数日後、漁師が大きな魚をポリュクラテス王に献上します。
なんと、その魚の腹から、海に投げ入れたその指輪が出てきたのです。
大変な奇跡というか、めでたい話です。
そんなに幸運が続くことがあるのです。
ポリュクラテス王は驚いて喜び、この奇跡をアマシス王に書き送りましたた。
しかし、手紙を読んだアマシス王は喜ぶどころか、おそれを感じました。
「この王は完全に幸運すぎる。
いずれ神々の嫉妬を受けて、破滅する運命にある。
吾はその災いに巻き込まれないように、彼との友情を絶つ。」と悟ります。
やがてその言葉通りに、ポリュクラテス王は非業の最期を遂げました。
参考文献
- 『宝石ことば』 山中茉莉 著 八坂書房
- 『価値がわかる宝石図鑑』 諏訪恭一 著 株式会社ナツメ社 発行
- 『知りたいことがすべてわかる 宝石・鉱物図鑑』 編者新星出版社編集部 新星出版社 発行
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