ルビーのネックレス

20世紀初頭に宝石業者により、国ごとの誕生石が統一されるまでは、ほとんどの国ではルビ─を12月の誕生石にしていました。
石の中に炎が燃えるイメージは、じっと春を待ちわびる情熱の冬を象徴していたのかもしれません。
また、ルビーを含めた紅玉を古代ギリシャでは、「アンスラックス」、古代ローマでは「カルブンクルス」と呼ばれていました。いずれも「燃える石炭」という意味でした。
さらにギリシャ神話と結びつき、ルビーは炎と戦いの神マルスが宿るとされ、強いパワーやエネルギーを持つ石と考えられていました。
古代インドでも、ルビーは「ラトナラジー」(宝石の王)あるいは、「ラトナヤカ」(宝石の首領)と呼ばれ、最も大きな価値を置かれていました。
それでは、「情熱」の「エナジー」の象徴ともいえるルビーの意味や伝説を探っていきましょう。
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ルビーのプロフィール
ルビーの語源
ラテン語で「赤」を意味する「ルベウス」です。ルビーの中でも「ピジョン・ブラッド」(鳩の血)と呼ばれる、わずかに紫がかった赤が最高とされています。
サファイアと同じ鉱物
ルビーは、サファイアと同じコランダム(酸化アルミニウム)の鉱物です。赤い色のものだけが、ルビーです。サファイヤは、青いイメージがありますが、赤以外の色のものは総てサファイアと呼ばれています。
ピンク色のものは、「ピンクルビー」と呼ばれますが、「ピンクサファイア」とも、呼べるわけです。だから、宝石業者によって名称が違うことがあり悩ましいです。
ダイヤモンドに続いて硬い
ルビーの硬度は、9で、ダイヤモンドに続いて硬いのです。
どんな光をあてても赤色に放射
コランダムに含まれたクロムが、ルビーの赤い色の元になっていますが、どんな色の光を当てても赤色に変えて放射するのがルビーの特徴です。ルビー重屈折性
ルビーとスピネルは混同されていた
スピネル

18世紀にその呼び名が決まるまで、別の鉱物でありながら、疑いもなくルビーだと信じられてきた宝石に「スピネル」という宝石があります。
大英帝国王冠に嵌められている「黒太子のルビー」やエリザベス女王の「ティムール・ルビー」がスピネルだと後世になって判明しました。
ルビーとスピネルの主な違い
ルビー | スピネル | |
---|---|---|
硬度 | 9度 | 7~8度 |
屈折 | 重屈折性 | 単屈折性 |
屈折率が高いほど光が屈折しやすく、輝きが強くなります。ルビーの方がスピネルより硬く、輝きが強いと言えます。
ルビーの意味
ルビーの石言葉
ルビーの石言葉は、
情熱 仁愛 威厳
です。
情熱
ルビーは燃えるような赤色から「情熱」を象徴する宝石です。恋愛や目標に対する強い思い、心の炎を表し、持つ人の内なるエネルギーを高め、前向きな行動力を引き出す力があるとされています。付随して、人に勇気をもたらす石とも言われます。
仁愛
ルビーは深い愛と優しさを象徴し、「仁愛」の心を育むとされています。思いやりに満ちた行動を促し、人間関係を円滑にするので、周囲との信頼関係を築くサポートをしてくれる石です。
威厳
古代より王族や権力者に愛されたルビーは、「威厳」を象徴します。堂々とした存在感を与え、持つ人に自信と誇りをもたらします。指導的立場にある人に特にふさわしい宝石です。
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ルビーの伝説
ミャンマーのドラゴンが産んだルビーの伝説
ミャンマーは、古くからルビーの産地として有名です。今から2千年ほど前に一頭のドラゴンが現れて、3つの卵を産み落としました。第一の卵から異教徒の王が生まれ、第二の卵からは中国の王が生まれ、そして第三の卵からはルビーが生まれたそうです。つまり、王と匹敵するほどの価値のあるのがルビーということです。
ルビーを献上すれば国王に生まれ変わるインドの伝説
神々に対する讃歌と言われる『リグ・ヴェーダ』によれば、「不老長寿の永劫(カルパ)の木にたわわに熟した果実は、ルビーに例えられ、クリシュナの神にルビーを献上して参拝する者は、今度生まれ変わった時は、力のある国王になれる」と書かれています。古代インドにおけるルビーの価値観が、国王になれる程の最上のものと位置づけられていることです。
イラン神話の英雄ロスタムの悲劇
イラン神話の大英雄ロスタムは、およそ700年の生涯の中で、ドラゴン、悪鬼、魔女などたくさんの敵をやつけてきました。ある時、トゥ―ラン国の属国サマンガーンの王は、有名なロスタムを歓迎し手厚くもてなしを行ないました。ロスタムは、しばらくその地に滞在して王女タハミーネと結婚しました。その後、タハミーネは妊娠しました。しかし、それから、ロスタムが仕えていたイランの王朝とトゥ―ラン国との間に争いが起こり、ロスタムは身ごもったタハミーネを置いて、サマンガーン国を去らなくてはいけなくなりました。生まれてくる子が心配になり、ロスタムはロスタム家に伝わる三粒の真っ赤なルビーを取り出して言いました。「生まれてくる子が娘なら、このルビーを髪飾りにしなさい。それが息子ならこのルビーを腕輪にしなさい。そうすれば、父を知らないその子がロスタム家の子だとわかるだろう。」と。
生まれたのは男でした。長い歳月が流れ、ロスタムの息子ソフラープは、英雄の息子らしく超人的な力をもつたくましい少年になりました。10歳になったときに、ソフラープは母から三粒のルビーがはめ込まれた腕輪を渡され、英雄ロスタムの息子であるということが知らされました。ソフラープはたいへん喜びました。
しかし、トゥ―ラン国王の命令で、ソフラープは、軍を率いてイランを攻撃しなくてはなりません。父の顔を知らないソフラープは、敵方のイランに父がいることを思い、とても苦しみました。そこで、少なくとも父と殺し合うことだけは避けるようにと、父の顔を知っている叔父を軍の一員に加えました。
イランに進軍したソフラープは、次々にイラン軍を撃墜していきました。イランの王は、脅威を感じ、ついに大英雄ロスタムに出陣を命じました。ロスタムは、トゥ―ラン軍の大将が、まだ若い少年だとは知っていましたが、自分の息子だとは思いませんでした。それもそのはず、自分の息子なら、まだ10才のはずです。ところで、ソフラープは、最期の戦いで、叔父を亡くしてしまい、もはや、敵陣に父ロスタムがいるかどうか確認する術はありません。
こうしたときに決戦の日が来ました。ソフラープはやむを得ず、敵の捕虜に敵陣にロスタムの旗印があるかどうか確認をさせます。捕虜はその旗印を認めたが、ロスタムはいないとウソを言います。そして、戦いが始まりました。
運命のいたずらで、ソフラープとロスタムは、向かい合うことになったのです。ソフラープは、ルビーの腕輪をしていましたが、鎧の下に隠れていて見えません。つまり、親子とは知らないままで、一騎打ちをすることになりました。
実力が互角で一日目には勝敗がつきませんでした。
翌日、二人は再び向き合い一騎打ちを始めました。戦いは激しく、昔のように若くはないロスタムは一度は、ソフラープに殺されかかりました。しかし、ロスタムは気力をふりしぼり、ついにはソフラープの胸に短刀を突き刺しました。ソフラープは血を流し倒れました。
そして、死に際に自分はロスタムの息子だと打ちあけたのでした。ロスタムは驚き、ソフロープの鎧を解くと、三粒のルビーがはめこまれた腕輪が見えました。
絶望したロスタムは、この戦いの後行方をくらましてしまい、その後長い間人々に姿を現わすことはなかったのです。
参考文献
- 『宝石ことば』 山中茉莉 著 八坂書房
- 『パワーストーン 宝石の伝説と魔法の力』 草野 巧 著 新紀元文庫
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