美しい海の色をした宝石アクアマリンは、日本やイギリスでは、3月の誕生石です。フランスでは、10月の誕生石ですが、古くは10月の誕生石とする国が多かった宝石です。

アクアマリンのプロフィール
アクアマリンの由来は、「海の水」
アクアマリンの名前は、ラテン語の「aqua marinus」(海の水)に由来します。
アクアマリンは、エメラルドと同じ緑柱石
アクアマリンは、エメラルドと同じ緑柱石(べリル)に属する石です。
鉱物学的には、化学式Be3Al2Si6O18をもつケイ酸塩鉱物で同じ鉱物です。
緑柱石(べリル)には、黄色、水色、ピンク、無色など様々な色がありますが、色によって区別され、青色のものが、アクアマリンと呼ばれ、緑色のものがエメラルドと呼ばれます。
緑柱石(ぺリル)の呼び名の違い
緑色 | エメラルド |
青色 | アクアマリン |
バラ色 | モルガナイト |
帯緑黄色 | ヘリオドール |
黄色 | イエロー・ぺリル |
黄金色 | ゴールデン・ぺリル |
無色 | ゴッシェナイト |
赤色 | ビキシバイト(ビックスバイト) |
アクアマリンは、船乗りの守護石
海を連想させるアクアマリンは、海の精や人魚伝説と結びつき、「人魚の石」とも言われ、船乗りのお守りとされ、海の危険から守ってくれる石と信じられてきました。
アクアマリンは、「夜の女王」
夜のパーティーが、ロウソクやガス灯の下で行われていた時代のヨーロッパでは、アクアマリンは夜の光の中で水を得た魚のようにキラキラと輝ていました。
そのことから、アクアマリンは「宝石の夜の女王」の名も持っており、パーティー好きな貴婦人に愛された宝石です。
日本では、アクワマリンとも呼ばれていた
日本ジュエリー協会は、2021年10月までは、正式名称を「アクワマリン」としていましたので、店頭でこの名前が使われていることもあります。
アクアマリンの意味 【石言葉】
アクアマリンの石言葉は、
①沈着 ②聡明 ③勇気 ④永遠の若さ
などです。
アクアマリンの首飾り

① 沈着
アクアマリンは、穏やかな海のような青色から「沈着」を意味します。心の波を静め、冷静な判断力を保つ力があるとされ、困難に直面しても落ち着いて行動できるように導いてくれる石です。
② 聡明
澄んだ青色の輝きをもつアクアマリンは、知恵と洞察をもたらす「聡明」の象徴です。思考を整理し、正しい選択を導く助けとなり、知性と直感を調和させて物事を見通す力を与えるといわれています。
③ 勇気
古代から「航海のお守り」とされたアクアマリンは、恐れを乗り越える「勇気」を意味します。
心を前向きにし、不安を振り払い新しい挑戦に臨む力を与えると信じられ、人生の旅路を支える石とされています。
④ 永遠の若さ
アクアマリンは、生命力と瑞々しさを意味し、「永遠の若さ」を保つと伝えられています。肉体の健康だけでなく、心の純粋さや希望を保ち、いつも輝きを放つ心の若さをもたらす宝石です。
アクアマリンの伝説
人魚の宝物を愛したエカチェリーナ2世の孤独
ロシアの歴史の中でも、「大帝」として名を残した女帝エカチェリーナ2世(在位1762~96年)は、実はロシアの血が一滴も入っていないロシア皇帝なのです。
エカチェリーナ2世は、1729年5月2日にドイツの一小国の公女として誕生します。生まれた時の名は、ゾフィー・アウグステ・フリーデリケでした。
不仲だったピョートル3世との結婚
16歳で、ロシア女帝エリザヴェータの甥ピョートル3世と結婚します。(ピョートル3世の父もドイツ人でした。)エカチェリーナ2世は、ロシア正教にも改宗し、ロシアの貴族や国民に支持される努力を惜しみませんでした。
一方のピョートル3世は、ドイツ風にこだわり続け、ドイツ式の兵隊遊びに熱中し、周囲の反感を買い続けました。
二人は不仲であり、結婚後は夫婦関係も無くなり、双方とも半ば公認で愛人を置いていました。
青年時代をドイツで過ごしたピョートル3世は、異常なほどプロイセンのフリードリヒ二世の崇拝者であったために、国益に反する行為をしたとして、皇帝になってわずか半年後に、皇后エカチェリーナ2世を支持する近衛部隊がクーデターを起こし、ピョートル3世は投獄され、殺害されます。
皇帝となったエカチェリーナ2世
夫の後を継いで、皇帝として即位したエカチェリーナ2世は、領土を拡大し、工業化の発展に尽くしました。また農奴制の拡大する中で、貴族の文化が開花します。
冬宮(現エルミタージュ美術館)やエカテリー宮殿で繰り広げられる華やかな宮廷生活は、宝石文化をも発展させたのです。
エカテリンブルク(現スベルドロフスク)は、エカチェリーナ2世が数千人の鉱夫を雇って採掘させた鉱山として知られています。このエカテリンブルクでは、豊富なアメシストやトパーズに混じって、多くのアクアマリンが採掘されています。
エカチェリーナ2世が一番愛したのはアメシストとアクアマリン
無類の宝石愛好家で知られるエカチェリーナ2世です。豪華絢爛なるロシアの宝物館に納められている彼女のコレクションが物語っています。約190カラットのオルロフ ダイヤモンドなどが有名です。
しかし、意外にも彼女が一番愛したのは、アメシストとアクアマリンでした。
アメシストは人生の悪酔いを防止してくれる石、アクアマリンも人生の航海を守る石。
彼女の愛した宝石の輝きから、権力の頂点で栄華を欲しいままにして生きてきたように見え、実は本心から人を信じ切れず、宝石にすがった気丈な一面が見えてくるようです。(出典『宝石ことば』 山中茉莉 著 八坂書房)
参考文献
- 『宝石ことば』 山中茉莉 著 八坂書房
- 『パワーストーン 宝石の伝説と魔法の力』 草野 巧 著 新紀元文庫
- 『474種の石と出会えるパワーストーンバイブル』 カサンドラ・イーソン著 日本文芸社