
クンツァイトは2021年、日本の誕生石改訂で9月の誕生石に加えられました。
このクンツァイトは20世紀初頭に発見されたため、古代から伝わる神話や伝説はありません。
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クンツァイトのプロフィール
クンツァイト(Kunzite)の名前
アメリカの 鉱物学者であり、近代の宝石学に貢献したジョージ・フレデリック・クンツ(George Frederick Kunz)博士の名前にちなんで命名されました。なぜ博士の名前がついたのか、後で詳しく解説します。
※ジョージ・フレデリック・クンツ(1856年9月29日 – 1932年6月29日)氏は、ニューヨークで生まれ幼い頃から鉱物学に興味を持ち、鉱物の収集に努め、独学で鉱物学を学びました。23歳(1879年)の時、世界的なジュエリー企業ティファニー社(Tiffany & Co.)に入社し才能を発揮し、後に副社長に就任しました。(1907年)
多数の論文や本を記述し、単なる科学としての鉱物学にとどまらず、人間と宝石の関係性を歴史・民俗・文化の視点から紐解きました。
クンツァイト(Kunzite)の鉱物名はスポジュメン(Spodumene)
スポジュメン(リチア輝石)

クンツァイトは、鉱物名:スポジュメン Spodumene(和名:リチア輝石)のひとつです。リチア輝石というように、リチウムを含んだ珪酸塩鉱物であり、化学組成は、LiAlSi₂O₆です。
アルミニウム原子の一部が他の金属イオン(不純物)に置き換わることによって白、無色、灰色、ピンク、紫、黄、緑など多彩な色を持を示します。
色によって、宝石名が違います。
クンツァイト (kunzite)・・・ 桃色や紫色のもの
ヒデナイト (hiddenite) ・・・黄緑色や緑色のもの
トリフェイン (triphane)・・・ 黄色のもの
ヒデナイト

スポジュメンの発見者は、後にブラジル独立の立役者となる人物
スポジュメンは1800年、ブラジルの博物学者ジョゼ・ボニファシオ・デ・アンドラーダ・エ・シルヴァ(1763年6月13日〜1838年4月6日)によって、スウェーデン・ウトー島産の標本をもとに新鉱物として記載されました。
名称はギリシャ語の「spodoumenos(灰にされた、灰のようになった)」に由来し、灰色を帯びた外観や、加熱すると灰のような状態になる性質にちなんで名付けられたとされています。
ちなみに、このボニファシオは、鉱物学者であると同時に政治家でもありました。ポルトガルからの独立運動を指導し、初代皇帝ペドロ1世を支えて近代ブラジルの基礎を作った「ブラジル独立の父(Patriarch of Independence))」と称される人物です。
クンツァイトは、「夕べの宝石」(イブニング・ストーン)
クンツァイトは、昼間の強い光ではなく、夕方や夜の照明の下で楽しむ宝石と言う意味で、「夕べの宝石」(イブニング・ストーン)とも呼ばれます。
クンツァイトは、強い光に長時間さらすと色が褪せることがあるため、自然光の中で色が褪せる傾向があるからです。
産地や個体によって変化の仕方は異なり、紫色がピンク色に変化するものもあれば、色が薄くなって無色に近くなるものもあります。例えば、アフガニスタン産は藤紫色で産出し、直接日光に当てると30分くらいでピンク色に変わってしまいます。またブラジル産は、日光に長く当てると、色が薄くなるといわれています。
これは、クンツァイトの色に関係するマンガンなどの状態が、光や熱によって変化するためと考えられています。
またクンツァイトの色は、放射線照射によって鮮やかにすることができます。
しかし、天然のクンツァイトも、処理済みのクンツァイトも、熱や強い光にさらされると色が褪せることがあるのです。
クンツァイトは、カッター泣かせの石
クンツァイトはモース硬度スケールで6.5から7に該当し、鉱物としては決して柔らかくありません。しかし、劈開性(一定方向にスパッと割れやすい性質)が非常に強く、非常にカッティングが難しい宝石として知られています。
二つの方向に完全な劈開をもつクンツァイトは、特定の角度から衝撃が加わると、劈開面に沿ってナイフで切り落としたように真っ直ぐで滑らかな断面で割れてしまいます。
クンツァイトの石言葉
濃いピンク色のクンツァイト

クンツァイトの石言葉は、
無償の愛 安らぎ 純粋な心
です。
無償の愛
淡いピンク色のクンツァイトは、穏やかで優しい印象を与える宝石です。その色合いから、見返りを求めない「無償の愛」を象徴する石言葉として表現されます。
安らぎ
クンツァイトの柔らかな色彩は、緊張を和らげるような静かな美しさを持っています。そこから「安らぎ」という石言葉が生まれ、穏やかな心や平静を象徴する言葉として用いられます。
純粋な心
透明感のある淡いピンクや紫色は、にごりのない清らかな印象を与えます。そのためクンツァイトには「純粋な心」という石言葉も与えられ、素直で飾らない心を象徴する言葉として親しまれています。
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神話なき宝石に刻まれたクンツの名
ジョージ・フレデリック・クンツは、クンツァイトを鑑定した人物
1902年、カリフォルニア州サンディエゴ郡で発見された淡いピンク色のスポジュメンが、ティファニー社の主任宝石鑑定士だったクンツのもとへ送られます。
ちなみに、クンツァイトは、カルフォルニアで初めて発見されたので、「カルフォルニアン・アイリス」(Californian iris)とも呼ばれています。
彼は、「これはスポジュメンだが、今まで知られていない美しいピンク色の変種だ」と鑑定しました。
実はスポジュメンという鉱物自体は19世紀初めから知られていました。しかし、宝石品質のピンク色は長い間ほとんど知られておらず、1902年にようやく新しい宝石として日の目に見ることになったのです。
翌年の1903年、ノースカロライナ大学の化学教授であったチャールズ・バスカービルが、クンツの功績を称えてKunzite(クンツァイト)と命名しました。
つまり、ジョージ・フレデリック・クンツは、クンツァイトの発見者ではなく、クンツァイトは、「価値を見出した鑑定者」の名前がついた宝石なのです。それも、初めて鑑定したからではなく、クンツの功績を称えて名前がつけられたのです。その功績とはなんだったのでしょう。
ジョージ・フレデリック・クンツは「宝石の伝説」を集めた第一人者だった
1900年頃のジョージ・フレデリック・クンツ氏

(画像出典:ウィキメディア・コモンズ File:GeorgeKunz1900circa.png)
クンツは、ティファニー社の宝石の鑑定士や鉱物学者であっただけではなく、世界中の宝石の神話や伝説を集めた人物でした。
1913年には名著『Curious Lore of Precious Stones』(『宝石の不思議な伝承』)を書きました。これは宝石にまつわる伝説や迷信、誕生石の由来などを世界中から収集した学術的な本です。
内容は、
石にまつわる迷信とその起源・ 護符や魔よけとしての宝石・ 水晶球と水晶占い・ 宝石の宗教上の用途・ 大祭司の胸当て・ 誕生石 ・惑星と恒星の力 ・宝石の治療的利用
であり、歴史的名著です。
これは、日本語訳が発売されています。(2011年刊、2023年に新装版)
また1915年には、続いて『The Magic of Jewels and Charms』(『宝石と護符の魔法 』)の本を出しました。宝石や護符、占い、宗教的・呪術的な用途などをより広く扱っており、古代・中世における宝石の治療的利用や魔法の石─電気石の伝承、隕石の歴史的な著述などを展開しています。
これも日本語訳がAmazonからkindle版で発売されています。⇒ 『宝石と護符の魔法 』kindle版
ジョージ・フレデリック・クンツの主な功績
クンツは誕生石についての歴史・伝承を研究し、その普及に貢献した
アメリカでは、1900年代初頭に、星座石や誕生月の石への需要が高まりました。そして、1912年に米国の National Association of Retail Jewellers(現 Jewelers of America) が誕生石リストを制定したのです。
前項で書きましたが、クンツは誕生石について熱心に研究し、著書 『The Curious Lore of Precious Stones』 などで古代・中世の伝承を整理し発表しました。
またティファニー社は、誕生石への需要の高まりに誕生石とその意味に関するパンフレットを発行し、クンツは執筆を担いました。
(出典 国際アンティーク宝石商協会(IAJA)『誕生石:古代から現代へと受け継がれる宝石』
クンツの研究は、誕生石のリストに歴史的な意味づけを与えたのでした。
万国博覧会でのアメリカ鉱物文化の発信
クンツは米国地質調査所(USGS)の特別代理人(1883~1909年)を務め、世界各国の万国博覧会(1889年パリ、南アフリカのキンバリー、1893年のシカゴなど)の鉱業展示の責任者を務めました。また、パリ万国博覧会(1900年)の特別代理人、セントルイス万国博覧会(1904年)のラジウム委員を務めました。
アメリカの鉱物・宝石資源の紹介や展示に重要な役割を果たしたのです。
(出典 ニューヨーク歴史協会 『ジョージ・F・クンツ文書』 )
ティファニー社で新しい宝石を世界へ紹介
クンツはティファニーに入社し、生涯をかけて素晴らしい宝石を世界を回り探し求めていました。その中で、クンツァイト(自分の名前を与えられた)やモルガナイト(命名に関与)の新しい宝石を紹介しました。また自国アメリカの宝石にも関心を示しモンタナ産サファイアをティファニーに紹介するなど、アメリカ産宝石の普及に貢献しました。(出典 Tiffany & Co. ティファニーカラーストーン )
まとめ
クンツァイトは、1902年カリフォルニア州で発見された淡いピンク色のスポジュメンの変種でした。当然ながら、古代の神話や伝説などありません。
しかし、その名前を与えられたジョージ・フレデリック・クンツは、古代から伝わる宝石の伝承や神話を研究し、『宝石の不思議な伝承』(1913年)『宝石と護符の魔法』(1915年)などにまとめた人物でした。
参考文献
- 『価値がわかる宝石図鑑』著者 諏訪恭一 発行 ナツメ社
- 『ジェムストーン百科全書』 著者 八川シズエ 発行 中央アート出版社
- Wikipedia George Frederick Kunz
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