深い青緑色をした美しい宝石であるエメラルドは、ダイヤモンドとともに、三大宝石、五大宝石、七大宝石の一つとされている程、評価の高い宝石です。
新緑の季節にふさわしい緑の代表石であるエメラルドは、世界の国々のほとんどで5月の誕生石になっています。
また、旧約聖書に登場するソロモン王が神から授かった四つの宝石の中にも、エメラルドが入っています。(他はルビー、ラピス・ラズリ、トパーズ)。
この宝石たちは、四つの方角を表し、世の中を統治する力を与えたと言われています。

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エメラルドのプロフィール
エメラルドの名前の由来は?
サンスクリット語の「スマラカタ(緑の石)」に由来するとされています。
それが、古代ギリシャやローマでは、スマクラグドス(smaragdos)と呼ばれるようになります。
プリニウスの『博物誌』によると12種類のスマクラグドスがあり、スキタイ種(エメラルド)が最良とされています。
この書物には、目の疲れを癒すことやネロ皇帝が剣闘士の戦いをスマクラグドスに写して観戦したことなど書かれています。
スマクラグドスは、ラテン語で「スマラグダス」となり、さらに「スマラルダス」に変化していき、そこから古フランス語で「エスメラルド」になり、現在の「エメラルド」と呼ばれるようになったとされています。
エメラルドと人間に傷のないものはない
「エメラルドと人間に傷のないものはない」と、良く言われることですが、「石れい」とよばれる特有の内包物や、細かい疵がほとんどのエメラルドに見られます。
宝石の成長過程で不純物や気泡が閉じ込められ、それが内包物となり、見た目には傷のように見えるのです。
エメラルドが形作られる時に必然的にできるものなので、むしろ天然石である証です。
特定の方向にショックを与えるとスパッと割れる
エメラルドの硬度は、7.5~8で宝石の硬度としては硬い方の部類ですが、劈開性(へきかいせい)といって、特定の方向に沿って割れやすい性質を持っています。
これは、原子間の結合力が方向によって異なるため起こるのです。
そういう難点があるので、家事やスポーツなどのカジュアルな装いには向きません。
エメラルド・カット
エメラルド・カット

エメラルドを代表とする六角柱の緑柱石の結晶を効率的にカットするために考案されたカットです。
内包物が多く、割れやすいエメラルドの性質から、角を少なくして欠けにくくしています。
これは、広いテーブル面と階段状のカットが特徴であり、エメラルドの色を引き出すのに適しているため、ほとんどエメラルド・カットと言う方式でカットされます。上品でクラシカルなイメージを与えます。
クレオパトラはエメラルド鉱山を保有していた
ギリシャ・ローマに伝わったエメラルドは、エジプト産だというのが定説になっています。エジプトでは、紀元前1500年頃には既に掘られていました。
エジプトと言えば、プトレマイオス朝のクレオパトラが、「若返りや再生のシンボル」とされたエメラルドに惚れ込み、鉱山を保有した話が有名です。
たくさん採掘され、早い時期に掘りつくされてしまい、幻のエメラルド鉱山となっていました。
しかし、1817年、そのエジプトの鉱山は探検家フレデリック・カイヨーによって再発見されました。
55年目の結婚記念日
エメラルドは、貞節・純粋を守った夫婦を心から祝福する宝石です。
55年目の結婚記念日は、翡翠(ひすい)を代用することも多く、「翠玉婚式(すいぎょくこんしき)」とも言われますが、記念石はエメラルドです。
エメラルドの意味 【 石言葉 】
諸説ありますが、代表的なものをあげました。
現代の石言葉は、
幸運 夫婦愛
です。
妻が持つと憂鬱な心の状態を解き放ち、愛情を深めて貞節を守り幸せになることができるとされています。
逆に、不貞や不誠実だと、壊れやすいというジンクスがあります。
エメラルドの神話と伝説
堕天使ルシファーの魔性の宝石
中世ヨーロッパ時代の人々にとって、ルシファーとは地獄の世界に君臨する悪魔たちのドンである大魔王です。
しかし、ルシファーというのは、「堕天使」と言われるように最初から悪魔だったのではありません。

ルシファーは、元々は天界で最も美しく、神にもっとも愛された大天使でした。さらには、大天使の中でも、唯一、神の右側に座ることが許された最高の天使だったので。
ルシファーの名は、ラテン語で「明けの明星」(つまりは、金星)「光をもたらす者」の意味があります。
ルシファーは、さまざまな宝石で飾られており、きらきらと輝いていました。美しい緑色のエメラルドの王冠をかぶっていたとも、額に三つ目の眼を持ち、それはエメラルドでできていたとも言われています。
しかし、ルシファーの名が示す通り、金星を意味していたのが象徴的です。金星は、太陽が昇る前に東の空に登場します。
そのため、金星は太陽に成り替わろうとする野心を持った神として結びつけられて様々な神話に登場します。
天界で最高の大天使だったルシファーにも、高慢な心が芽生え、自分を神をも超える存在と思い始め、神の怒りを買ったのです。
そして、ついに天界を追放され地獄の底に落とされたのです。最高の天使だったものが、悪魔たちを率いる大魔王サタンとして大転換したのです。
この時から、中世にはエメラルドも地獄や悪魔と結びつく宝石とも考えられるようになったとされています。
参考文献
- 『指輪が語る宝石歴史図鑑』 諏訪恭一 著 中村淳 写真世界文化社
- 『宝石ことば』 山中茉莉 著 八坂書房
- 『パワーストーン 宝石の伝説と魔法の力』 草野巧 著 新紀元社
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