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クリソプレーズ(緑玉髄)の神話と伝説|アレクサンドロス大王から12の土台石まで

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クリソプレーズは、アップルグリーン色の半透明なカルセドニー(玉髄)です。

カルセドニーのグループの中ではもっとも価値の高いといわれる宝石です。古代より人気の高い石で、古代ギリシャやローマ時代には飾り石として利用されていました。

このクリソプレーズ(緑玉髄)の神話や伝説などを探ってみましょう。



クリソプレーズ(緑玉髄)のプロフィール

クリソプレーズの原石

クリソプレーズ chrysoprase の由来

クリソプレーズの名は、ギリシャ語のクルーソ chrysos(黄金)とプラソン prason(西洋ネギ)に由来します。

クリソプレーズの緑はニッケルに起因

エメラルドの緑色はクロムを含有するためですが、クリソプレーズの緑色はエメラルドとは違って、含有するニッケルによるものです。

クリソプレーズは石英のグループ

クリソプレーズは、石英グループの中でも結晶粒が極小で肉眼では結晶として認識できない玉髄類(玉髄・瑪瑙・碧玉)の半透明な玉髄です。

クリソプレーズの仲間の様々な玉髄

ヨーロッパ中世のクリソプレーズ

マルボドゥス『 石について』(1061年から1096年の間に書かれた)を読むと、このように書かれています。

 XV クリソプラッソス(緑玉髄) クリソプラッソスは、宝石の国インドに産まれる。 この石は、ニラの汁に似た色だが、色が混ざっており、 金色の斑点が、紫に染まっているかのように輝いている。この石の持てる力を、私はまだわかっていない、 力があるのは信じているが、すべてを知ることは許されていないから。

マルボドゥス『 石について』 高橋邦彦 訳 kindle版

「緑に黄金色の輝きを帯びる石」というのは、古代ローマ時代のプリニウスの 「chrysopassus 」とほぼ同じ色の表現です。それと、インド産(当時は東洋一般をさしていたようです。)であると記述しています。

このことから、この「クリソプラッソス」が現代のクリソプレーズを指してはおらず、実際にはペリドットではなかったのかというのが有力な説です。

ヨーロッパ中世のパワーストーン クリソプレーズ

ヒルデガルト・フォン・ビンゲンの『フュシカ』(1151年~1158年の間に書かれた)には、「クリソプライス」のパワーについて書かれています。

クリソプライス

  • この石が成長するのは、太陽が完全に沈んでしまって空気と水がどんよりと緑がかった色を帯びる時である。
  • 痛風の人は素肌のその部分にこの石をあてがうと癒える。
  • これを所持していると空気の霊たちが悪ふざけしてこない。
『フュシカ』 山中茉莉著『宝石ことば』(八坂書房)より

新しいエルサレムの12の土台石の10番目の石

新約聖書の「ヨハネの黙示録」に登場する、「新しいエルサレム」の城壁の土台を飾る12種類の宝石の10番めにクリソプレーズが選ばれています。

※ しかし和訳される場合、10番めはクリソプレーズ(緑玉髄)ではなく、「ひすい」に訳されることが多いです。また英語版でも書かれた時代や本によって宝石の表現が違うようです。

アメリカ聖書協会のHoly Bible(1816)にはこの記述になっています。

①jasper ジャスパー
②sapphire サファイア 
③ chalcedony カルセドニー 
④emerald エメラルド
⑤ sardonyx サードオニキス 
⑥ sardius  サーディアス
⑦chrysolyte クリソライト
⑧ beryl ベリル 
⑨ topaz トパーズ 
⑩ chrysoprasus クリソプレーズ 
⑪ jacinth ヒアシンス 
⑫ amethyst アメシスト

Holy Bible(1816)



クリソプレーズ(緑玉髄)の石言葉

クリソプレーズの石言葉は、

人間関係の調和  希望  自己成長  

です。

人間関係の調和

クリソプレーズの穏やかな緑色は心を落ち着かせ、感情のバランスを整える石として親しまれています。また、怒りや嫉妬といった負の感情の高まりを抑え、周囲との関係を円滑にする助けになるといわれます。

希望

優しいアップルグリーンの色合いから「希望」の象徴とされます。心の中に灯る前向きな力を引き出す石といわれます。不安な気持ちをやわらげ、未来への道筋を見つける手助けをしてくれると信じられてきました。持ち主の思考を明るい方向へ導いてくれる守護石です。

自己成長

クリソプレーズは潜在能力や創造性を引き出す石とされ、停滞を感じた時に新しい一歩を踏み出す力を与えると伝えられます。劣等感や不安を癒し、自分の中にある可能性に気づかせてくれるため、成長や変化を望む人を支える石として人気があります。



クリソプレーズ(緑玉髄)の神話と伝説

アレクサンドロス大王の成功の守護石

紀元前4世紀のマケドニアの王アレクサンドロス3世(アレクサンダー大王)は、20歳でギリシャ世界の北東部に位置したマケドニア王国の王位に就き、アケメネス朝ペルシャを滅ぼし、ギリシアからインド北西部にまたがる大帝国を実現しました。

アレクサンドロス大王は、クリソプレーズの石に魔力があると信じており、戦いの際には腰帯にクリソプレーズをつけていつもに着けていたという伝説があります。

アレクサンドロス大王の騎馬像 
北マケドニア共和国 スコピエのマケドニア広場

彼は紀元前334年にペルシャとの戦いを始めてから、向かうところ敵なしの快進撃を続け、ガウガメラの戦い(紀元前331年)、ヒュダスペス河畔の戦いなど勝利を収めていきました。

ところが、インド遠征からの帰途のことです。アレクサンドロス大王は、川で体を洗うため、腰帯を外して脇に置き川に入ったところ、一匹の蛇が近づき、そのクリソプレーズの石をくわえて持ち去り、消えてしまったのです。

川から出て、守護石がないのに気づいたアレクサンドロス大王は、急いで部下たちに探させました。しかし、守護石のクリソプレーズは大王の手には戻りませんでした。

やっとのことでバビロンまで帰還したアレクサンドロス大王ですが、クリソプレーズに加護された強運もここまでだったようで、32歳の若さで急死することになったのです。

参考文献

  • 『パワーストーン 宝石の伝説と魔法の力』草野巧 著 新紀元社 発行
  • 『価値がわかる 宝石図鑑』 諏訪恭一 著 ナツメ社 発行 
  • 『誕生石のメッセージ 宝石ことば』 山中茉莉 著 八坂書房 発行 
  • 『聖書の鉱物誌』 島田昱郎 著  東北大学出版会 発行 

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