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ジャスパー(碧玉)の神話と伝説|試練を越える真実の愛の石

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ジャスパー(碧玉)は、古代よりさまざまな地域で採掘され石器や印章の材料として用いられてきたひじょうになじみのある石です。
そのジャスパー(碧玉)の歴史や伝説など、さまざまな角度から紹介します。

ジャスパー(碧玉)のプロフィール

ジャスパー Jasper の由来

ギリシャ語の「jaspis」に由来し、「斑点のある石」を意味する古代フランス語の「jaspre」が「Jasper(ジャスパー)」になったと言われています。

ギリシア語 jaspis → ラテン語 jaspidem → フランス語 jaspreということです。

また、中世の学者であるバルトロマエウス・アングリクス(13世紀)は、ジャスパーのギリシャ語の由来について「アスピス(毒蛇)と闘うアダ―(毒蛇)の頭部には小さな石があり、ジャスピス(Jaspis)と呼ばれる」と記述しています。

ジャスパーは、カルセドニー類の一種

ジャスパー(碧玉)は、鉱物種 石英の中の塊状結晶鉱物(潜晶質)のグループの中で、不純物が多く不透明なものをいいます。

色が単一の物もありますが、不純物が多いので、多様な色や模様を生み出します。

古代では、ジャスパーは緑色の石

古代ローマの博物学者プリニウスは『博物学』の中で、「iaspis(ジャスパー)は非常に多くの種類をもつ」としつつも、「とりわけ緑色のものが最も高く評価される」としています。また「あるものは光を通す」ともありますので、現在の宝石学におけるジャスパーとは違います。

後の時代の4世紀『リティカ』には、雨を降らせる石として、「若草色の」ジャスパーが書かれました。

若草色に光るジャスパーを身につけている者が祈れば
慈悲深い神々は祈りを聞き届けるであろう
神々は乾ききった土をうるおすために雨を呼び
おびただしい雨がからからの大地にしみこむだろう

『リティカ』の一節を『図説宝石と鉱物の文化誌』 原書房 ジョージ・フレデリック・クンツ著(鏡リュウジ監訳)より引用

ジャスパーは新しいエルサレムの12の土台石の1番目の石

新約聖書「ヨハネの黙示録」第21章11節には、「その都の輝きは、高価な宝石、透きとおった碧玉(ジャスパー)のように輝いていた。」と書かれ、新しい都エルサレムが持つ神聖さ、純粋さ、そして比類ない美しさを碧玉(ジャスパー)で例えています。

さらにその「新しいエルサレム」の城壁の土台を飾る12種類の宝石の1番めにジャスパーが選ばれています。

アメリカ聖書協会のHoly Bible(1816)にはこの記述になっています。

① jasper ジャスパー
② sapphire サファイア 
③ chalcedony カルセドニー 
④ emerald エメラルド
⑤ sardonyx サードオニキス 
⑥ sardius  サーディアス
⑦ chrysolyte クリソライト
⑧ beryl ベリル 
⑨ topaz トパーズ 
⑩ chrysoprasus クリソプレーズ 
⑪ jacinth ヒアシンス 
⑫ amethyst アメシスト

Holy Bible(1816)

ジャスパーの種類

・赤色(レッドジャスパー) 佐渡の赤玉石が有名です。

レッドジャスパー

・緑(グリーンジャスパー)・・・島根県の出雲石が有名です。出雲石の勾玉(まがたま) 

・緑色中に赤の斑点があるもの・・・ブラッドストーンブラッドストーン

・ピクチャージャスパー・・・風景画のような模様のジャスパー

・バンブルビージャスパー・・・マルハナバチ(バンブルビー)のようなジャスパー

マルハナバチ(バンブルビー)のような黄色・黒の模様が特徴の、インドネシア産の新しい混合鉱物で、エクリプスストーンとも呼ばれます。

マルハナバチは、このような色の蜂です。

・レオパードスキンジャスパー・・・ヒョウ柄のような模様

ジャスパー(碧玉)の石言葉(意味)

① 守護・保護

ジャスパーは古代から護符や印章に用いられ、身を守る石と考えられてきました。不透明で堅牢な性質は「外的影響を遮る力」の象徴とされ、旅人や戦士の護符として携帯された例もあります。現代の石言葉「守護」は、こうした実用的・呪術的伝統に基づいています。

② 安定・大地の力

ジャスパーは、視覚的にも「揺るがなさ」を感じさせます。そのため精神を落ち着かせ、現実に足をつける力を与える石とされました。石言葉の「安定」「グラウンディング(Grounding)」は、大地と結びつく石という象徴理解から生まれています。

③ 忍耐・持続

風化に強いジャスパーは、長期間形を保つ石です。この性質から、困難に耐え抜く力や、物事を最後まで成し遂げる忍耐の象徴とされました。
古代では長期的な契約や誓約に関わる印章石として用いられたことも、この解釈と結びつきます。

④ 生命力・再生

とくに緑系ジャスパーは、植物の成長や生命循環を連想させる色を持ちます。古代ギリシア・ローマでは、緑色の iaspis が活力や健康と関係づけられました。石言葉の「生命力」「再生」は、色彩象徴と自然観に根差した意味づけです。

⑤ 誠実・真実

不透明で飾り気のない外観は、虚飾のない「真実性」を象徴すると解釈されてきました。そのためジャスパーは、誓い・忠誠・正直さを示す石とされ、指輪や印章に用いられました。

ジャスパー(碧玉)の神話と伝説

永遠に愛し合う二人は現実では一緒になれない『トリスタン物語』 

王妃イゾルデ(イズ―)と王の甥であるトリスタンの愛の物語は、ヨーロッパ中世の最大の恋物語です。二人は愛し求めますが、社会的には許されぬ恋であり多くの妨害に遭います。

この妨害のなかで、信頼の証は、イゾルデからトリスタンに渡されたジャスパー(碧玉)の指輪。それはトリスタンの使者と偽るものを識別するためのアイテムであったのです。


トリスタンは、イングランドの南西の端に位置するコーンウォールを治めているマルク王の妹を母にもつ若者です。叔父のマルク王に愛されトリスタンもマルク王を愛し勇敢な騎士となり忠誠を尽くし武功を重ねていました。

しかし、ある時トリスタンがマルク王の寵愛を受けていることに嫉妬した諸侯たちが、王に王妃を娶ることを勧めました。このままだと、トリスタンが次の王になってしまうからです。

王は、二羽のツバメが王宮に運んできた黄金色の髪の毛の持ち主をめとることを言いました。

それは、アイルランドの王女イゾルデの髪の毛だと気づいたトリスタンは、アイルランドに向かいました。アイルランドには、恐ろしい竜がいました。いけにえに若い娘をさしださないと誰も門の外に出れないような怪物です。

この竜を退治した者には、王女イゾルデを与えると王は布告を出していました。勇敢なトリスタンは、竜の毒気を浴び瀕死になりながらも、竜の口にさしこんで退治しました。

トリスタンは、王女イゾルデをマルク王の王妃として迎える話をまとめました。しかし、トリスタンとイゾルデは、アイルランドからコーンウォールに向かう船の中で、「婚礼の夜にマルク王とともに飲むように」とイゾルデの母から託された媚薬を間違って飲んでしまい、お互い愛し合うようになってしまうのです。

船の中で媚薬を飲んでしまったトリスタンとイズ─(Herbert James Draper 画) 

決して許されない恋愛です。
トリスタンは、マルク王を敬愛しつつも、王妃イゾルデに永遠に愛するという大きな苦しみを一生抱えていくことになりました。

道ならぬ恋に苦しんだ二人ですが、遠く離れて暮らさざるをえなくなります。イゾルデは自らの指から、碧玉の指輪をはずし、「もしあなたの使者と言って誰が来ても、この指輪を示さない限りは、わたしは信じません。」と言い、形見にトリスタンに渡しました。

イゾルデと別れて旅立ったトリスタンは、やがてブルターニュ(フランス最西端の地方)のカルエー城の客人となります。ここでも武功をたててその力が認められました。そして、カエルダンという親友を得ます。

しかし、トリスタンはカエルダンと共に戦いに出た時、毒が塗ってある槍に傷ついてしまいました。生きる力が衰えていく中、トリスタンは自分の死が近づいているのを悟りました。死ぬ前に、イゾルデになんとしても会いたい。そう思うと、親友カエルダンに碧玉の指輪を託し、マルク王の城からイゾルデを連れだしてくるよう頼みました。

カエルダンは、商人に化けてマルク王の城に行きました。商品をすすめるふりをしながら、イゾルデに指輪を差し出し、密かに話をします。翌日、イゾルデは城を抜け出し、カエルダンの船に乗り込みました。

だが、一足遅かったのです。イゾルデが到着する直前にトリスタンは死んでいました。そのことを知ったイゾルデも絶望のあまりに息耐えてしまったのです─。

なぜに指輪の石が、碧玉(ジャスパー)であったのでしょうか?

①忠誠と保護の象徴

碧玉はヨハネの黙示録で聖都の城壁の第一の土台とされる聖なる石です。中世においても、碧玉は、身につける者を守り、正しい判断力を与える「聖なる石」でした。トリスタンが王への忠義(社会的な義務)と、イゾルデへの愛(魂の契約)のどちらに対しても「誠実」であることを願う、護符としての意味が込められています。それゆえトリスタンはマルク王への「忠誠(騎士の道)」とイゾルデへの「愛(情熱の道)」の間で常に引き裂かれています。

②永遠の愛の象徴

碧玉は非常に硬く、色が褪せない石です。二人が別れる際、常にイゾルデの存在を感じ、彼女を思い出すような永遠の愛の象徴だと思われます。

③本人確認の証明

碧玉は古代からよく印章に用いられた石です。この指輪はトリスタンが死の淵にある際、イゾルデを迎えるために自分の正体を伝える重要な役割を果たします。特定の意匠が施された、あるいは、珍しい碧玉を用いた指輪であることは、他の誰でもない「トリスタン本人」であることを証明するツールにふさわしかったのではないでしょうか。

参考文献

  • 『価値がわかる宝石図鑑』 著者 諏訪恭一 発行 株式会社ナツメ社
  • 『宝石ことば』    山中茉莉 著 八坂書房
  • 『パワーストーン 宝石の伝説と魔法の力』 草野 巧 著 新紀元文庫
  • 『トリスタン・イズ―物語』べディエ編 佐藤輝夫訳 岩波文庫

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