緑色に赤い斑点が血の滴りのように見える不思議なこの宝石、名の通りブラッドストーンですが、古代エジプトやバビロニアの時代から護符や印象として利用されていました。
この神秘的な石、ブラッドストーンの紹介をしていきましよう。

ブラッドストーンのプロフィール
ブラッドストーンは、日本では血玉髄とも
ブラッドストーンは、日本では血玉髄、血石、血星石と呼ばれています。
ブラッドストーンは、ヘリオトロープとも呼ばれる
古い呼び名で、ブラッドストーンは、エジプトのヘリオポリスで採れたことからヘリオトロープ(heliotrope)と呼ばれたとされています。
ヘリオトロープは、ギリシャ語で「太陽の方を向くもの」という意味です。同じく「ヘリオトロープ」という花があります。石言葉に関係しますので伝説の所で、詳しく述べます。
ブラッドストーンは碧玉(ジャスパー)の一種
ブラッドストーンは、細かい粒の石英の結晶が集まった不透明な碧玉(ジャスパー)の一種です。ジャスパーは旧石器時代から、装飾品として使われてきた伝統ある宝石です。
他のジャスパーにはどんな石があるのでしょう。
- レッド・ジャスパー 佐渡の赤玉石が有名です。
- グリーン・ジャスパー 島根県玉造の出雲石が有名です。
- その他の色のジャスパー 青森県の錦石が有名です。
- ブラッドストーン 緑色の中に赤い斑点が点在するジャスパーをこう呼びます。
キリストの血が落ちて、ブラッドストーンになった
中世の伝説には、イエス・キリストが十字架にかけられたとき、傷口から鮮血が緑の石にかかり、キリストが蘇えり昇天した後に、血がかかった石はブラッドストーンになったというものがあります。
出血防止や兵士のお守りでもあったブラッドストーン
赤い斑点を持つブラッドストーンには、古くから血止めや血液に関係する力を持つと考えられてきました。
古代ローマでは、剣闘士や兵士の間で人気があり、護符として持ち歩く習慣がありました。中世のヨーロッパでは、鼻血を予防したり、怒りを鎮める効果あると信じられてきました。
ブラッドストーンの意味【石言葉】
ブラッドストーンのピアス

ブラッドストーンの石言葉は、
①献身 ②勇敢 ③沈着 ④聡明
①献身
ブラッドストーンは、他者のために尽くす心を象徴する石です。古来より、犠牲と奉仕の精神を表す「聖なる石」とされ、困難の中でも人を支える力を授けると信じられてきました。真心からの献身や、見返りを求めない愛の象徴とされています。
②勇敢
ブラッドストーンは、古代戦士の護符でもありました。恐れに打ち勝って、信念を貫く勇気を与える石とされ、危機に直面したときに冷静さと強さを保つ力をもたらすと伝えられています。
③沈着
心を落ち着かせる石としても知られます。困難や試練に直面しても感情に流されず、冷静に物事を判断できるよう導くとされます。また、ブラッドストーンを持っていると、権力者の怒りを鎮めることができるとも言われます。激情の中にも理性を保つ沈着さを助けるです。
④聡明
知恵と洞察を高める力を持つとされ、正しい判断や的確な行動を助ける石といわれます。また、自分の話すことは、どんなことでも信用させることが出来るというパワーを持ちます。
混乱した中でも本質を見抜き、知恵ある選択へと導く存在です。古代では、神託や瞑想の助けに用いられたとも伝わります。
ブラッドストーンの伝説
ヘリオトロープの花

ギリシャ神話にも、ブラッドストーンの古名である「ヘリオトロープ」という同じ名の植物の話が登場します。
ブラッドストーンは、太陽の向きを変える魔力があるとされますが、植物名も、ギリシャ神話に登場する太陽神ヘリオスに関係しているのです。
太陽神といえばアポロンが有名ですが、紀元前4世紀頃からヘリオスと習合するようになったとされています。
太陽は、天空を飛ぶヘリオス神の4頭立て馬車であると古代ギリシア人は信じていました。
ヘリオスはあるとき、女神アフロディテ(いわゆるヴィーナス)とアレース神(ローマ神話では軍神マルス)の不倫を見つけて、女神の夫ヘーパイストスに言いつけました。
恥をかいたアフロディテは、ペルシア王オルカモスの娘である美女レウコトエにヘリオスが好きになるように仕向けますが、ヘリオスはまんまと恋に落ちていきます。
しかし、ヘリオスには、クリュティエという水の妖精の恋人がいたのです。
クリュティエは、ヘリオスの心変わりを知ると、嫉妬心を募らせ、レウコトエの父親オルカモス王に告げ口します。
娘の情事をしらされたオルカモス王は、冷酷無残で情け容赦ない裁きを与えました。地面に深い穴を掘ると、そのなかに娘を埋め重たい砂をかぶせたのです。
驚いた太陽神ヘリオスは、まぶしいひかりで砂の山を打ち破ったけれど、すでにレウコトエは砂に押しつぶされ死んでいました。
ヘリオスは、神酒ネクタルを彼女の体に降り注いで、彼女を乳香の木に変えて天界へと連れていきました。このようにクリュティエの復讐は成功しました。
ところが、肝心のヘリオスは二度とクリュティエの所には戻らなかったのです。クリュティエは錯乱して昼も夜も何も食べずに、大空を渡っていく太陽を見続け、悲しみに打ちひしがれるうちに亡くなってしまいます。
そのうち彼女の手足は大地とつながり、やせ細った体は草になり顔は紫の花になったのです。これがいつも太陽を恋しく見ているという「ヘリオトロープ」植物名になった起源の神話です。
参考文献
- 『価値がわかる宝石図鑑』 著者 諏訪恭一 発行 株式会社ナツメ社
- 『宝石ことば』 山中茉莉 著 八坂書房
- 『パワーストーン 宝石の伝説と魔法の力』 草野 巧 著 新紀元文庫