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【4月の誕生石 水晶(ロッククリスタル)】神話と伝説|清浄と予感の石

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イギリスでは、水晶は4月の誕生石ですが、残念ながら日本では誕生石に指定されていません。

誕生石でいう「水晶」は、無色透明なものを言います。

また水晶は、日本では弥生・古墳時代にかけて勾玉に加工されてきた石で古代から非常になじみの深い石です。

透明な石に古代より人々は呪術性を感じ、その後の時代にも、占いに欠かせない水晶玉に用いられるようになるなど、東洋や西洋を問わず不思議な呪術的パワーをもつ石として考えられてきました。

水晶のプロフィール

東洋では水から石になったもの

「水晶」という名は、中国から来た呼び名で「水が結晶したもの」という意味です。日本では、奈良時代には「水精」と呼ばれ、水の精が宿る石、魂を洗い清める石と考えられ、仏像の白毫びゃくごう(第三の目)や数珠じゅずに使用されていました。

クリスタルの語源は、氷に由来する

透明な水晶を英語では、「クリスタル」と呼びますが、結晶という意味もあります。

「クリスタル」という言葉は、ギリシャ語〝krustallus〟(クリスタロス=氷)に由来します。

古代ヨーロッパでは、水晶のほとんどがスイスやアルプスの万年雪のある場所で発見されていました。

そのため、水晶は氷が石になったものだと考えられていたそうです。

中世後期になると無色透明なガラスが登場し、「クリスタルガラス」と呼ばれるようになったため、水晶をガラスと区別するために「ロッククリスタル」とも呼ばれるようになりました。

水晶は、石英(クォーツ)の一種で無色透明の結晶

石英の一族(化学式SiO₂玉(ジャスパー)などが存在する幅広い一族です。

水晶は、その中でも結晶が六角柱状の自形結晶を持ち、無色透明なものを「水晶」(ロック・クリスタル)いいます。

【結晶による石英の分類】

  • 結晶質鉱物・・・ロッククリスタル(水晶)・アメシスト(紫水晶)・シトリン(黄水晶)など
  • 塊状結晶鉱物(肉眼で結晶が見えない)・・・カルセドニー(玉髄)・碧玉(ジャスパー)・瑪瑙(アゲート)など
  • 非結晶鉱物・・・オパールなど

【参考文献】『価値がわかる宝石図鑑』著者 諏訪恭一 発行 ナツメ社

ロッククリスタル以外の「水晶」たち

もともと無色透明な結晶のものが、4月の誕生石「水晶」(白水晶─ロッククリスタル)で水晶と呼んでいましたが、現在では、結晶の形が見えるものも広く水晶と呼びます。

下記のように加わった不純物の違いによって、様々な水晶があります。

  • 紫水晶(アメシスト)・・・鉄分が含まれる。
  • 黄水晶(シトリン)・・・天然のものは稀。アメシストを加熱したものがほとんど。
  • 煙水晶(スモーキー・クォーツ)・・・アルミニウムが含まれる。
  • 茶水晶(ケアンゴーム)・・・煙水晶がさらに黒みを感じる石。
  • 黒水晶(モリオン)・・・微量のアルミニウムイオンが放射線を受けることで発色。
  • 紅水晶(ローズ・クォーツ)・・・アルミニウムやチタンを含む。
  • 幻影水晶、山入水晶(ファントム・クォーツ)・・・結晶の成長過程が内部に模様として残ったもの。
  • 針入り水晶(ルチル・クォーツ)・・・ルチル(金紅石)が水晶に入り込んだもの。

ルチル・クォーツ

【参考文献】 『知りたいことがすべてわかる 宝石・鉱物図鑑』 編者新星出版社編集部 発行 新星出版社

水晶は、イエスを身ごもったマリアの象徴

キリスト教の世界では、精霊によってイエスを身ごもったマリアの象徴として考えられていました。

マリアが水晶(クリスタル)でありイエスが光であるならば、光はマリアの体を透過したにもかかわらず、マリアは傷つかないからです。

水晶(ロッククリスタル)の意味 【石言葉】

水晶の石言葉は、

①予感  ②清浄  ③潔白

などです。

①予感

水晶は、古来より霊的な感受性を高め、未来を見通す力をもつ石とされてきました。澄んだ透明の輝きは、直感や洞察を研ぎ澄ませ、真実を見抜く力を助けてくれます。つまりは、正しい選択へと導く“予感”を与えてくれるのです。

②清浄

水晶はあらゆるものを浄化するパワーを持つと信じられてきました。邪悪なものを払い、澱んだものを清める清浄の象徴です。迷いや不安を取り除き、透明な心で新たな一歩を踏み出す力を授けます。

③潔白

水晶は、一点の曇りもない透明さをもつことから、純粋さと誠実さを象徴します。正直でまっすぐな生き方の守護石として大切にされてきました。潔白な心を持ち続けることの尊さを教える、清らかな光の石です。

水晶(ロッククリスタル)の神話と伝説

女将軍 神功皇后が海で拾った如意珠伝説

月岡芳年筆「日本史略図会 第十五代神功皇后」

神功皇后(じんぐうこうごう)は、14代天皇の仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)の皇后です。だいたい古墳時代中頃の人物ですね。

『日本書紀』によれば、神功皇后は、巫女の力が抜群に優れていて、数々の神々の託宣(神がひとに乗り移って神の意志を伝える)をします。

ある時、先に穴門あなと国(現在の山口県)においでになっていた仲哀天皇に呼ばれ、神功皇后は穴門国の豊浦津(現在の長府の付近の港)に入港されました。

その日は7月5日。皇后は「如意珠にょいのたま」を海から拾われたといいます。
この如意珠は、意思のままに願いを成就させてくれる水晶の玉でした。

どんな事柄も占って、神のお告げを聞き、成功に導く神功皇后でしたが、如意珠を拾ってからは、無敵のパワーを得たといえるでしょう。

仲哀天皇が神託を疑ったせいで神の怒りにふれ、急に病になり崩御してしまいました。

神功皇后は、夫の遺志を継ぎ、女将軍となり、3月に九州の熊襲征伐くまそせいばつを成功させました。さらに神託に従って10月には海を越えて新羅へ攻め込んだと思うと、百済、高句麗も次々に服属させてしまいました。(三韓征伐)

さて、ものすごいパワーを発揮した如意珠ですが、現在も、神功皇后の如意珠だと伝えられているものが、神功皇后とゆかりの深い廣田神社(兵庫県西宮市)に「劔珠劔珠」とよばれる水晶玉が神宝として保管されています。

水晶の中に棒状の異物を含んでおり、これが剣のようだというので「(剣)珠」といわれます。

廣田神社の公式ホームページ「御宝物」でその如意珠が確認できます。

鳥獣の鳴き声を翻訳する安部晴明の水晶玉

平安時代の有名な陰陽師おんみょうじである安倍晴明あべのせいめいにまつわる伝説です。

安倍晴明の母「くずの葉」は、実は雌狐めすぎつねで、かつて晴明の父「保名やすな」に命を助けられたことから、人間に化けて、「保名」の妻となっていました。

この結婚から7年目の秋のある日のこと。安倍野にあった「保名」の屋敷の庭には美しい菊の花が咲いていました。「葛の葉」は、その美しさに思わずうっとりして、自分が人間の仮の姿をしていることを忘れ、本当の姿を現してしまいました。

それをなんと息子の晴明に見られてしまいました。

本当の姿を人間に見られてしまうと、「葛の葉」はもう人間界には居られなくなるのです。

こうして、「葛の葉」は形見を二つ、晴明に残して去っていきました。その形見というのは、四寸四方の黄金の箱と水晶玉でした。

黄金の箱は、龍宮世界の秘符で、人間世界の出来事すべてを知ることができます。水晶玉は、それを耳に当てると、あらゆる鳥獣の鳴き声を理解することができるというものです。

そんなある日、鳥が二羽舞い降りてきてなにかさえずるのが聞こえてきました。安倍晴明は、形見にもらった水晶玉を耳にあてると驚くべきことを知りました。

この頃天皇は重い病気を患っていましたが、その原因は、御殿の北東の礎の下に生き埋めされた蛇とカエルの怨念が炎となって天に昇ったためだというのです。

晴明は父と共にすぐにも京へ上りました。当時朝廷では天下一の陰陽師と評判の芦屋道満あしやどうまんが天皇の病を治すためあらゆる手段を尽くしていましたが全く効果があがりませんでした。

そこへ晴明たちが駆けつけると、病気の原因をすぐ取り除き、天皇の病を治したのです。

この結果、晴明は五位を賜って昇殿を許されるようになりました。後には陰陽師頭として名を後世に馳せることになりました。

参考文献

  • 『価値がわかる宝石図鑑』 諏訪恭一 著 株式会社ナツメ社 発行
  • 『宝石ことば』    山中茉莉 著 八坂書房
  • 『パワーストーン 宝石の伝説と魔法の力』 草野 巧 著 新紀元文庫
  • 『日本書紀(上)全現代語訳』 宇治谷 孟 著 講談社学術文庫
  • 『知りたいことがすべてわかる 宝石・鉱物図鑑』 編者新星出版社編集部 新星出版社 発行

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