コバルトグリーントルマリン

熱をおびると電気を発生する不思議な特徴をもつトルマリンです。
古代の文献では発見できない新しい宝石の名前ですが、他の宝石と間違われ、他の宝石に包摂されていたのではないかとされています。
トルマリンの文化や伝説に触れてみましょう。
トルマリンのプロフィール
トルマリンの語源
この石が初めてセイロン(現スリランカ)からヨーロッパに伝えられたのが1703年です。
名前の由来は、スリランカのシンハラ族の言葉で、宝石の砂礫を意味する「トルマリ(Turmali)」からきています。
初め「イエロー・ジルコン」のために、ジルコンとトルマリンが混合した石の呼称とされていましたが、それが誤ってトルマリンのみに用いられるようになったと言われています。
トルマリンの鉱物学的性質
トルマリン (tourmaline) は、ケイ酸塩鉱物のグループ名です。
宝石となるものは大部分が「リチア電気石」(elbaite)です。
その化学式は、Na(Li,Al)₃A(BO₃)₃Si₆O₁₈(OH)₄です。
硬度は、7~7.5です。
トルマリンは熱を加えると電気を帯びる
この性質に初めて気づいたのは、アムステルダムの研磨技術工でした。セイロンから送られてきた時、彼らはこの石に灰が吸いつけられるのを見て、「灰を引きつける石」と呼んでいました。
それを博物学者のリンネが「電気石」と名前をつけ、電気を帯びる性質を科学的に証明したのが、ドイツの物理学者エピススだとされています。
トルマリンは多彩な色をもつ

トルマリンは、無い色がないほど、あらゆる色がそろっています。無色、黒色、褐色、赤色、橙色、ピンク、紫色、青色、緑色、黄色などカラフルです。
トルマリンの中でも特徴のあるもの
パライバトルマリン

ネオンのような青い輝きが特徴のパライバトルマリンは、その美しさと希少性から、トルマリンの中でも極めて人気の高い宝石です。
鮮やかなブルーまたはグリーンの色が特徴ですが、これは銅を多量に含んでいるためです。
ブラジルの北東に位置するパライバ州サンジョセ・ダ・バターリャ村から産出したことからその名前がつけられました。
バイカラートルマリン

ピンクと緑など2色以上の色を示す不思議な宝石です。
パーティ─カラード・トルマリンとも言います。(三色以上を言う場合が多い)
ウォーターメロントルマリン

文字通り、スイカの輪切りのような色合いのものを言います。
トルマリンの石言葉
トルマリンの石言葉は、
希望 友情 寛大 思いやり 心身のバランス 浄化
です。
トルマリンが「電気石」と呼ばれるように、帯電してマイナスイオンを放つ性質から、「悪いものを取り除き、心を整える」象徴とされていることから、このような石言葉が考えられています。
希望
トルマリンは多彩な色を持ち、どの色も光を受けて美しく輝きます。
その姿は、苦しい中であったとしても未来に光を見出す象徴とされ、「希望」の石と呼ばれます。心に前向きな力を与えてくれる存在です。
友情
トルマリンは人と人との心をつなぐ石といわれます。
「異なる色が共に輝く」ように、性格の違いを超えて理解し合う友情を育む力を象徴します。
誠実な関係を築き、友情を長く保ちたいときに寄り添う石です。
寛大
「さまざまな色を受け入れて美しさを増す」トルマリンは、広い心と包容力の象徴です。自分や他者を責めず、受け入れる寛大さを促すといわれます。人への思いやりや、柔らかな心の余裕をもたらす石です。
思いやり
トルマリンは共感と優しさを育てる石とされています。心の波を穏やかにし、他人の痛みを理解する力を高める象徴です。
愛情を素直に伝えたいとき、また人に優しくありたいと願うときに力を貸してくれます。
心身のバランス
トルマリンは微弱な電気を帯びる特性を持ち、昔より心身の調和を整える石とされてきました。
精神と肉体のバランスを保ち、心身の緊張をやわらげる象徴です。
感情の波を静め、自然体で生きる力を与えます。
浄化
「電気石」とも呼ばれるトルマリンは、「負のエネルギーを吸収し、清らかな状態へ戻す力」を象徴します。
心の曇りや迷いを洗い流し、周囲の空気をも浄める石とされます。
再出発やリセットの象徴でもあります。
トルマリンの神話と伝説
バイカラー・トルマリンの結晶

少女と以心伝心する石
アメリカの作家ヘレン・ハント・ジャクソン(Helen Hunt Jackson)の書いた『私のトルマリン』小説があります。(サックス・ホルムの物語、第2シリーズ所収の短編です。)
アメリカの田舎の町でのことです。
ある可憐な少女アリーが山道の大きな木の下で、きらきら光る美しい小石を発見しました。
しかし、その石に駆け寄る時に、木の根につまづいて倒れてしまいました。そのせいで足を傷めて6週間もベッドから離れることができなくなりました。
少女はベッドの上で、道で拾った小石を眺めていました。その小石の一端は鮮やかな緑色で、残りはローズピンク色のとても美しい石です。
彼女がその小石をまるで生き物のように、優しく撫ぜて話しかけると、不思議なことに小石が返事をするようにチクチクと感じるのです。
このように少女に返事をする小石は、すっかり評判になり、珍しい鉱石のひとつとして、ある博物館に送られることになりました。
ところが、博物館に届けられる途中で紛失してしまったのです。
彼女は、とても悲しみました。
それから、ずいぶんと歳月が経ち、少女は花嫁になる日が来ました。新婚旅行はヨーロッパです。
旅行先のある博物館で、宝石のコレクション展をやっていたので、彼女は立ち寄ってみたくなりました。
そこに飾ってあるいくつかのトルマリンの中から、一つを見つけると、彼女は「私の石だわ!」と、思わず叫びました。
石も嬉しそうに輝きました。
彼女はあまりの嬉しさにその場に立ち尽くしてしまったそうです。
ベンジャミン・フランクリンとトルマリン
ベンジャミン・フランクリン(1706–1790)は、日本では雷は電気だと証明した凧の実験でおなじみですか、其の他にも出版事業家、発明家、「アメリカの建国の父の一人」とも称される政治家でもあるマルチな活躍をした人物です。
ジョゼフ・デュプレシによるベンジャミン・フランクリンの肖像画

ベンジャミン・フランクリンは、トルマリンの帯電現象についても実験を行っていました。
加熱による帯電実験(焦電効果の観察)
フランクリンは、トルマリンの結晶を温めるとその両端に異なる電荷(+と-)が生じることを観察したと報告しています。(これは現代で言う「焦電効果(pyroelectricity)」と言います。)
また、トルマリンをリングに装着して指輪として所持しており、指の温もりでも帯電作用が起きうるという観察も行っています。
フランクリンのトルマリンによる電気的特性の発見は、いろいろな科学分野の人々に影響を与えました。
参考文献
- 『宝石言葉』 著者 山中茉莉 発行 八坂書房
- 『価値がわかる宝石図鑑』著者 諏訪恭一 発行 ナツメ社
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