
3月の誕生石であるアイオライトは、青紫色で、見る角度によって、様々な色合いに見える不思議な宝石です。
このアイオライトの宝石の魅力や伝説を探っていきます。
アイオライトのプロフィール
アイオライトの語源
ギリシャ語で青紫を意味するイオス(Ios)と、石を意味するライト(Lithos)からアイオライト(Iolite)とされました。
日本名「菫青石」は、文字通り、「すみれ色の青い石」であり、同じ意味です。
アイオライト原石

アイオライトの別名 【ウォーターサファイヤ】
アイオライトは19世紀頃まで「ウォーターサファイア(水のサファイア)」とも呼ばれていました。
この名称は、サファイアに似た青色を持ちながら、水のような透明感や淡い色合いを示すことに由来すると考えられています。
また片方で、スリランカの河川の砂礫層から産出したことに由来するとする説もありますが、それを裏付ける古い文献は確認されておらず、語源ははっきりしていません。
アイオライトの鉱物名は、コーディエライト(cordierite)
宝石名(変種)アイオライトの鉱物名は、コーディエライトといいます。その名前は、フランスの鉱物学者ピエール・ルイ・アントワーヌ・コルディエ(Pierre Louis Antoine Cordier)に由来します。
化学組成は Mg₂Al₃(AlSi₅O18)であり、ケイ酸塩鉱物の一種です。
アイオライトの特徴 多色性(三色性)

アイオライトは、石を見る方向によって色が違って見える、多色性が強い宝石です。ある方向からは濃い青色に見え、別の方向から見ると褐色を帯びた無色、また別の方向からは、少し青みを帯びた無色に見ると言った具合です。
異方性結晶に含まれる発色元素が、結晶方向によって異なる光を吸収することで生じる現象である。色の違いが明確ではなく、濃淡に変化に見られる場合も多色性と言います。
ダイクロアイト(Dichroite)
アイオライトは、「二つの色をもつ石」という意味で過去「ダイクロアイト(Dichroite)」という別名も持っていますが、二色だけではありません、実際は三色性であり、結晶軸の3方向で異なる色相を見せます。
アイオライト以外の多色性の強い宝石
アイオライトの他には、多色性の強い宝石に、タンザナイト、アンダリュサイト、クンツァイト、アレキサンドライト、アキシナイト、シリマナイトなどがあります。
宝石での比較
| 宝石 | 複屈折 | 多色性 |
|---|---|---|
| アイオライト | あり | 非常に強い(三色性) |
| カルサイト | 非常に強い | ほぼない |
| ダイヤモンド | なし | なし |
| サファイア | あり | 強い(二色性) |
| トルマリン | あり | 強い(二色性) |
※ 正方晶系、三方晶系、六方晶系の鉱物は2色間のみの色変化であるため二色性と呼ばれる。斜方晶系、単斜晶系、三斜晶系の鉱物は3色を示すことができる三色性と呼ばれる。
上の表で見られるように、複屈折が強くても多色性が強いとは限りません。
ブラッドショットアイオライト(別名:アイオライトサンストーン)
レピドクロサイトなどの赤系鉱物が内包されることによって、赤味が見えるアイオライトがあり、これはブラッドショットアイオライトと呼ばれます。

アイオライトの石言葉
クリソベリル・キャッツアイの石言葉は、
道を示す・誠実・自立・ 希望
です。
道を示す
中世アイスランドの『聖オーラヴのサガ』には、曇天でも太陽の位置を知る「太陽石」が登場します。後世、この石の候補としてアイオライトが挙げられたことから、人生の進むべき方向を見極める「道を示す」という石言葉が生まれました。ただし、これは現代の解釈によるものです。
誠実
アイオライトは見る角度によって青や紫、透明へと色彩を変える多色性を持つ宝石です。さまざまな表情を見せながらも本来の美しさを失わない姿から、自分らしさを大切にする「誠実」の象徴とされています。
自立
アイオライトは見る方向によって異なる色を見せる個性的な宝石です。その特徴は、多様な視点を持ちながらも自らの判断で前へ進む姿に重なり、「自立」の石言葉へと結び付けられました。周囲に流されず、自分の意思を大切にする心を象徴するとされています。
希望
深い青紫色のアイオライトは、夕暮れの空から夜明けへ移り変わる空の色を思わせます。その静かで澄んだ輝きは、困難の中でも未来へ目を向ける希望の象徴として親しまれ、「希望」の石言葉が与えられています。
アイオライトの神話と伝説
バイキング羅針盤石 ─ 太陽石の一つの候補

『聖オーラヴのサガ』の中でも、オーラヴ王の物語群の一つである『ラウズルフの話(Rauðúlfs þáttr)』には、次のような場面があります。
※『聖オーラヴのサガ』は、11世紀前半(ヴァイキング時代)のノルウェー王「オーラヴ2世」の生涯を描いた物語です。
ちなみに「ヴァイキング」というのは、後世「海賊」のようなイメージが形作られましたが、歴史的には正しくありません。ヴァイキングとは、8~11世紀に北大西洋やヨーロッパ各地を航海し、交易や開拓を行った北欧の人々です。実際には優れた航海術によって広範な交易網を築き、北ヨーロッパの発展にも大きな役割を果たしました。
吹雪で太陽が見えなくなったため、王は「太陽石(sólarsteinn)」を持って来させた。
王はその石を掲げ、石から光がどの方向に現れるかを見ることで、太陽の位置を確かめた。
『聖オーラヴのサガ』に登場する「太陽石(sólarsteinn)」には、現代の鉱物学上の名称は登場しません。
中世北欧では鉱物を現在のように分類しておらず、「太陽の位置を知るための石」という機能を表す呼称であった可能性があります。
1967年頃、デンマークの考古学者 Thorkild Ramskou が、「サガの太陽石は偏光を利用した鉱物ではないか」という仮説を発表します。
候補として、アイスランドスパー(透明方解石)、コーディエライト(アイオライト)、トルマリンが挙がりました。
アイオライトは、強い多色性(プレオクロイズム)や偏光を利用できる可能性のある石ですが、その「太陽石」の一つの候補に過ぎないのです。
しかし、20世紀後半にジュエリー業界ではアイオライトは、「ヴァイキング・コンパス(Viking Compass)」という俗称で紹介されるようになりました。
現代ではアイオライトも候補の一つと考えられていますが、透明方解石(アイスランドスパー)など他の鉱物であった可能性も議論されています。(参考 Wikipedia サンストーン(中世) )
透明な方解石(カルサイト)
光を二つに分ける複屈折という強い光学特性を持つ

参考文献
- 『価値がわかる宝石図鑑』著者 諏訪恭一 発行 ナツメ社
- 『ジェムストーン百科全書』 著者 八川シズエ 発行 中央アート出版社
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