【12月の誕生石 トルコ石】 その意味と伝説

トルコ石の原石

 

 

冬の晴れた日の空のような清らかなブルーの宝石のトルコ石。その歴史や意味をまとめました。

 

 

トルコ石の名前の由来

 

ターコイズ(Turquoise)は英語の読みで、トルコ石のことです。過去、日本では「藍宝石」、中国では「緑松石」と呼ばれていました。

 

トルコ石の歴史は非常に古い

 

トルコ石の歴史は大変古く、メソポタミアでは、紀元前5000年のトルコ石のビーズが発見されていました。古代インカの財宝の中にも発見されています。

 

美しい石を意味する「カレース」とローマ時代には呼ばれていました。

 

アリストテレスは『鉱物書』という本の中で、「空気が純粋なら(トルコ石の)色も純粋。空気が濁ると石も濁る」と、述べています。

 

トルコ経由で持ち込まれたのでトルコ石

 

「トルコ石」と呼ばれるようになったのは、13世紀ごろです。

 

主産地であるイランやシナイ半島からこの石をベネチアの商人がトルコ経由でフランスに持ち込んだ時、買い手が「トルコの石」と呼んだことが名前の由来です。

 

トルコ石の意味や伝説

 

 

人にもらうと幸せになる

 

トルコ石は、自分で買うより、ひとにもらうと幸福になれるという言い伝えがあります。

 

ハプスブルク家ルドルフ2世 ( 1552~1612 ) の従医アムセルムス・デ・プートが著した『宝石の歴史』のなかにもトルコ石の不思議な逸話が載っています。(当時の医者は、占星術や人生相談も受け持っていました。)

 

人にもらって、美しい宝石に蘇える

 

あるスペイン人が、30年間愛用し続けたターコイズを売りに出しました。すっかり色褪せたそれは、とても宝石とは呼べるような代物ではありませんでした。

 

デ・プートの父はそれを買い求め、「トルコ石は、人から貰った時のみに、その効力を発揮するという。本当かどうか、これをお前にあげるから、試してみるといい」といって、デ・プートに与えました。

 

デ・プートは、その石に彫刻をして印章にして、いつも大切に身につけていました。すると不思議なことに、1ヶ月も経たないうちに、色を取り戻し、美しいターコイズ・ブルーの宝石として蘇えったのです。

 

 

旅の守護石

 

デ・プートのもう一つの逸話です。

 

後年デ・プートはイタリア留学をします。学業を終えて、ボヘミアへ帰国の途中には、険しい道を夜中に通らないといけない羽目になります。

 

そこを通過中、彼の乘った馬車は転倒、デ・プート地面に叩きつけられたでした。しかし、なんと無傷で一命を取り留めたのです。

 

翌朝、ふと腕につけていトルコ石を見ると、4分の1ほど欠けて無くなっていました。トルコ石が身代わりになってくれたらしいのです。

 

その後もトルコ石の不思議は続きました。

 

デ・プートが重い棒を担いだ際に、脇腹に激痛が走ります。骨が織れたような音がしました。

 

しかし、なんと体は全く無事でした。その代わりに、トルコ石が半分に割れていたのです。

 

17世紀初めまで、トルコ石は男性の必需品として、男性は競って愛用されていました。

 

 

弓や鉄砲の命中のお守り

 

古代アステカやマヤ、中央アジアやアメリカの先住民等、古くから弓や鉄砲にトルコ石をはめて、命中のお守りにしていました。

 

 

トルコ石から生まれた、創造主トルコ石乙女の伝説

 

アメリカ南西部に住むナバホ・インディアンの神話では、ナバホ族び偉大な4氏族を創造したのは、トルコ石から生まれた「トルコ石乙女」という女神だったと言われています。

 

神話によると最初の男と最初の女が長い旅の果て(日本神話のイザナギ・イザナミみたいです。)にナバホの土地にやってきた時、「大マツの山」の麓でちょうど赤ちゃんぐらいの大きさのトルコ石のかたまりを発見しました。

 

このトルコ石から生まれたのがトルコ石乙女(タ―コイズ・ウーマン)で、生まれるとすぐに成長し、太陽と結婚します。

 

そして、トルコ石乙女は、「光」と「闇」という双子の兄弟を生みます。

 

この双子は、地上で暴れまわっていた怪物を退治するのですが、戦いが激しすぎたことにより、人類が絶滅してしまったのです。

 

これを見たトルコ石乙女は、新しく人間を創る必要を感じます。

 

自分の左右の胸をこすると、右の胸からは白い小麦粉、左の胸からは黄色いトウモロコシの粉が落ちてきました。

 

これを混ぜ合わせて、ペースト状にして、人間の男女の形作り、その上に魔法の毛皮をかぶせます。すると翌日生きた男女の人間になっていたのです。

 

この二人から、ナバホ族の偉大な4氏族を生まれてきたのだそうです。

 

 

永遠の若さの霊力  トルコ石

 

アパッチ族の伝説によれば、トルコ石乙女は、「変わる女」(チェンジング・ウーマン)と呼ばれています。

 

彼女に老いが表れると、彼女は東に向かって旅を始めます。そうすると、はるか彼方から、彼女自身の「若い形」がやってきます。

 

そして、老いた彼女が、若い形に出会うとき、彼女は生まれ変わり、若々しい姿をとりもどすのだといいます。

 

このように、トルコ石乙女は、無限に時間のなかで生き続け、時の経過や植物の成長をつかさどることになります。

 

このような霊力が、トルコ石そのものに宿っていると考えられています。

 

 

【 参考文献 】

 

『宝石ことば』    山中茉莉 著 八坂書房

 

『指輪が語る宝石歴史図鑑』 諏訪恭一 著 中村淳 写真世界文化社

 

『パワーストーン 宝石の伝説と魔法の力』 草野 巧 著 新紀元文庫