【1月の誕生石 ガーネット】 その意味と伝説

ガーネットの原石

 

 

1月の誕生石であるガーネットですが、古代からお守りとして使用された最も古い宝石です。

 

原石は、見事な斜方12面体の整った形をしているので、宝石の元祖ともされています。

 

その伝説や歴史から、ガーネットの意味について考えていきます。

 

 

宝石 ガーネットの名前の由来

 

ガーネットは、通称「柘榴(ざくろ)石」と呼ばれます。柘榴の真っ赤にはじけた実のイメージから「ガーネット」の名前が誕生したわけです。

 

語源的には、サンスクリット語の「疲れた」がギリシャ語の「年寄り」やラテン語の「種や粒」になり、ここから「種を無数につけたもの」という名詞になり、「グラーナトゥ」(柘榴)という言葉が生まれ、これを英語で「ガーネット」と呼ぶようになったとされています。( 山中茉莉著『宝石ことば』八坂書房)

 

柘榴(ざくろ)の実

 

 

多産や豊穣と復活をもたらす石 ガーネットの神話

 

柘榴の実には、たくさんの種子が詰まっています。それゆえ、「多産と豊作」の象徴とされており、元来地母神と結びつきやすいのです。

 

フランス神話 ヴィーヴルとガーネットの眼

 

フランスの地母神ヴィーヴルは、蛇の体にコウモリの翼をもつドラゴンでした。その眼は、真っ赤な宝石のガーネットでした。

 

古来神は蛇やドラゴンだったというのは万国共通のようです。

 

なぜか、その眼は取り外しができて、川で水浴をするときに岸辺に置いておく習性がありました。

 

また、ヴィーヴルは美しい女性の姿をした精霊だったという伝承もあります。しかし、それは仮の姿で、やはり、蛇の身体にコウモリの翼をつけたドラゴンだったといいます。

 

そして、ガーネットは眼ではなく、ヴィーヴルの額に小さな割れ目があって、そこに赤いガーネットが埋まっていたという伝承もあります。(転じて、ガーネットの王冠をかぶっていたとも)

 

それで男性を惹きつける魔力を持っていました。(多産の象徴)

 

洞窟に籠る地母神ヴィーヴル

 

このガーネットのおかげで、災いを防ぎ幸運を呼ぶというパワーがありました。

 

そのため、多くの人がそれを奪い取ろうとしました。

 

ヴィーヴルはそのことが疎ましくなり、財宝と一緒に洞窟に身を隠し、入口の扉を完全に閉じてしまったのです。

 

(少し天の岩戸神話にも通じるところがあります。)

 

しかし、この扉は1年に一度、復活祭前の日曜日にになると自然に開いたといわれています。

 

このことは、冬が終わり、また芽吹く春の季節が始まること(生命の復活)を意味しています。

 

 

ギリシャ神話 死の国の女王ペルセポネと柘榴

 

直接ガーネットの宝石が出てくる話ではなく、ざくろが登場する神話です。

 

 

死の国に連れ去られるペルセポネ

 

地母神デメテルは、穀物を成長させる役割をもつ豊穣の女神です。

 

最高神ゼウスとの間に、ペルセポネという娘がいました。彼女自身が、地母神の性格を引き継いでいました。

 

ある時、ペルセポネは、ゼウスの兄であり死の国の王であるハデスに見染められて、連れ去れてしまいました。

 

死の国に行って、ハデスのお妃になったのでした。

 

洞窟に籠るデメテル

 

母であるデメテルは、嘆き苦しみ、暗い洞窟の中に籠って出てこなくなりました。

 

豊穣の神が籠ってしまったので、大地はやせ細り、植物は枯れ、木の実も色つかず、穀物も収穫できなくなってしまいました。

 

人々は飢えに苦しむだけになってしまいました。

 

ゼウスは心配して、いろいろな神々を派遣しましたが、なんの効果もありませんでした。

 

結局、ヘルメスを派遣してペルセポネを生の国に返すようにハデスに告げさせました。お妃となったペルセポネは大喜びでした。

 

さすがに、ハデスもそのことに従い、黄金の車に栗毛の馬をつけさえ帰る準備をしました。ペルセポネが車に乗る時に、柘榴を食べるように勧めました。

 

ペルセポネは喜んで四つぶの柘榴を食べると、まっすぐに生の国に行きました。

 

復活をとげたペルセポネ 春が始まる

 

母子は、抱き合って涙を流して喜びました。

 

しかし、デメテルはなにかに気づきました。「我が子よ、死の国で何かものを食べなかったのか」と聞きます。

 

娘から柘榴の実を食べたことを聞くと、大きく落胆しました。死の国でものを食べた者は、必ず死の国へ行けなくてはすまない掟があったからでした。

 

ゼウスの裁定の下りました。「ペルセポネは、柘榴の粒を4ヶ食べたので、一年のうち8ヶ月を生の国に住み、残る4ヶ月は死の国に居なさい。」とのことです。

 

こうして、ペルセポネが帰ってきたのでデメテルは洞窟から出てきたので、しおれていた草木に命がよみがえり、鳥は歌い、羊が遊ぶ春がやってきました。

 

また、ペルセポネが死の国に行った4ヶ月は、あの洞窟に籠って、世界はまた冬枯れの状態になりました。

 

季節の起源とも言われるこの神話ですが、死から復活というメッセージもあります。そこでは柘榴が重要な役割を演じています。

 

 

【 参考文献 】

 

『宝石ことば』    山中茉莉 著 八坂書房

 

『パワーストーン 宝石の伝説と魔法の力』 草野 巧 著 新紀元文庫

 

『ギリシャ神話』 ジェームス・ボールドイン 著 杉谷代水 訳 富山房企畫

 

『指輪が語る宝石歴史図鑑』 諏訪恭一 著 中村淳 写真世界文化社

 

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